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ビジネスデューデリジェンスとは...
デューデリジェンス
ビジネスデューデリジェンスとは?調査項目・進め方・分析方法を解説

M&Aでは、対象企業の決算書や契約書を確認するだけでは、買収後も事業が成長を続けられるかを判断できません。
現在の売上や利益が良好でも、市場が縮小している、主要顧客への依存度が高い、競争力のある商品が一部に限られているなど、将来の収益を不安定にする要因が隠れていることがあります。
こうした対象企業の将来性や事業計画の妥当性を検証するのが、ビジネスデューデリジェンスです。
市場、競合、顧客、商品、組織、業務体制などを分析し、M&Aを実行すべきか、買収価格は妥当か、買収後にどのような施策が必要かを判断します。
この記事では、ビジネスデューデリジェンスの目的や主な調査項目、進め方、分析方法、M&Aの意思決定への活用方法を解説します。
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- ビジネスデューデリジェンスとは
- 対象企業の将来性と事業計画の妥当性を検証する調査
- 財務デューデリジェンスとの違い
- ビジネスデューデリジェンスを行う目的
- ビジネスデューデリジェンスの主な種類
- 市場や顧客を分析するコマーシャルデューデリジェンス
- 業務体制を分析するオペレーショナルデューデリジェンス
- ビジネスデューデリジェンスで調査する項目
- 市場規模・成長性・業界動向
- 競合企業と対象企業の市場ポジション
- 顧客構成・販売チャネル・主要取引先
- 商品・サービスとビジネスモデル
- 組織・人員・業務プロセス
- 売上・利益の構造と事業計画
- シナジーとディスシナジー
- ビジネスデューデリジェンスの進め方
- 調査目的と重要な論点を整理する
- 必要な資料を収集・分析する
- 経営者や現場担当者へヒアリングする
- 外部情報を使って仮説を検証する
- 事業計画を修正し調査結果を報告する
- ビジネスデューデリジェンスで使われる分析方法
- PEST分析で市場を取り巻く環境を確認する
- 5フォース分析で業界の競争環境を確認する
- 3C分析で市場・競合・対象企業を比較する
- SWOT分析とVRIO分析で競争力を検証する
- バリューチェーン分析で価値とコストの発生源を確認する
- ビジネスデューデリジェンスの結果をM&A判断にどう反映するか
- 売上・利益計画の前提を見直す
- 複数の事業シナリオを作成する
- 修正後の事業計画を企業価値評価に反映する
- シナジーの実現可能性と追加投資を評価する
- 事業継続に必要な条件をM&A契約に反映する
- M&Aを実行するかどうかを判断する
- 調査結果を買収後の事業計画とPMIに反映する
- ビジネスデューデリジェンスを行う際の注意点
- 売り手から提示された事業計画を鵜呑みにしない
- シナジーを過大評価しない
- 複数のシナリオで将来収益を検証する
- 資料だけでは確認できない事業リスクもある
- 顧客や取引先から見た対象企業の評価
- 経営者やキーパーソンへの依存リスク
- 業界内での評判や事業実態
- 外部調査を検討すべきケース
- まとめ
ビジネスデューデリジェンスとは
ビジネスデューデリジェンスとは、M&Aや投資の対象となる企業について、事業の競争力、将来性、事業計画の妥当性などを調査する手続きです。
「ビジネスDD」と略されるほか、「事業デューデリジェンス」と呼ばれることもあります。対象企業が将来にわたって売上や利益を維持・成長させられるかを検証し、買収判断や価格交渉に役立てます。
関連記事:デューデリジェンスとは?M&Aで行う目的・種類・流れ・注意点を解説
対象企業の将来性と事業計画の妥当性を検証する調査
ビジネスデューデリジェンスの中心となるのは、対象企業の将来収益を検証することです。
たとえば、対象企業が今後3年間で売上を毎年20%伸ばす計画を立てていたとしても、その数字だけでは実現可能性を判断できません。
市場自体が成長しているのか、顧客数を増やせるのか、価格を引き上げられるのか、必要な人員や設備を確保できるのかなど、売上計画を支える前提を確認する必要があります。
ビジネスデューデリジェンスでは、事業計画を売上数量、単価、顧客数、原価、人件費などに分解し、それぞれの前提が現実的かを検証します。
単に「成長が期待できる」という説明を受け入れるのではなく、成長を実現するための根拠や条件を明らかにする調査です。
財務デューデリジェンスとの違い
財務デューデリジェンスは、主に過去の決算や財務資料を確認し、対象企業の収益力、資産・負債、キャッシュフローなどの実態を調査します。
一方、ビジネスデューデリジェンスでは、市場環境や競争力、顧客動向などを分析し、将来の売上や利益がどの程度見込めるかを検証します。
簡単に整理すると、財務デューデリジェンスが「これまでの業績と現在の財務実態」を確認する調査であるのに対し、ビジネスデューデリジェンスは「今後の事業と収益の見通し」を確認する調査です。
ただし、両者は完全に独立しているわけではありません。
財務デューデリジェンスで判明した過去の売上推移や利益率をもとに、ビジネスデューデリジェンスで将来計画の妥当性を検証するなど、相互に結果を参照しながら進めます。
関連記事:財務デューデリジェンスとは?調査項目・進め方・費用をわかりやすく解説
ビジネスデューデリジェンスを行う目的
ビジネスデューデリジェンスを行う主な目的は、M&Aに関する意思決定の精度を高めることです。
具体的には、次のような判断に活用されます。
対象企業を買収すべきか
売り手が提示する事業計画は妥当か
提示された買収価格に見合う収益力があるか
買い手との間にどのようなシナジーがあるか
買収後にどのような経営課題へ対応すべきか
調査の結果、当初想定していた成長が見込めないと分かれば、買収価格を見直したり、契約条件を変更したりする必要があります。
反対に、売り手が十分に評価していなかった販売網や顧客基盤などが見つかり、買収後の成長余地が明らかになることもあります。
ビジネスデューデリジェンスの主な種類
ビジネスデューデリジェンスの範囲は案件によって異なりますが、一般的には、コマーシャルデューデリジェンスとオペレーショナルデューデリジェンスに分けて整理できます。
市場や顧客を分析するコマーシャルデューデリジェンス
コマーシャルデューデリジェンスは、市場、競合、顧客などの外部環境を中心に分析し、対象企業の成長性や競争力を検証する調査です。
市場の拡大が見込めるか、対象企業の商品やサービスが競合に対して優位性を持っているか、顧客との取引を継続できるかなどを確認します。
業務体制を分析するオペレーショナルデューデリジェンス
オペレーショナルデューデリジェンスは、組織、人員、設備、業務プロセスなど、対象企業が事業を運営するための内部体制を分析する調査です。
事業計画を実現できる体制が整っているか、買収後に改善や追加投資が必要な領域はないかを確認します。
ビジネスデューデリジェンスで調査する項目
ビジネスデューデリジェンスでは、外部環境と内部環境の両面から対象企業を分析します。
市場が成長していても、対象企業に競争力がなければ収益は伸びません。反対に、優れた商品を持っていても、市場が縮小していれば成長には限界があります。
個別の要素だけでなく、それぞれが事業計画にどのような影響を与えるかを検証することが重要です。
市場規模・成長性・業界動向
まず、対象企業が属する市場の規模や成長性を確認します。
過去の市場規模だけでなく、今後も需要が増えるのか、法規制や技術革新によって市場構造が変わる可能性はないかなどを分析します。
主な確認項目は次のとおりです。
現在の市場規模
過去の成長率
将来の成長予測
市場を成長・縮小させる要因
法改正や規制の影響
技術革新による代替リスク
顧客ニーズや購買行動の変化
市場成長率が高くても、対象企業が参入している領域だけ成長が鈍い場合もあります。そのため、市場を商品、地域、顧客層などに分けて確認する必要があります。
競合企業と対象企業の市場ポジション
対象企業が市場内でどのような位置にいるかを把握するため、主要な競合企業と比較します。
比較する主な項目は、商品、価格、品質、ブランド、販売網、顧客基盤、技術力などです。
売上が伸びている企業であっても、市場全体の成長に乗っているだけで、独自の競争力を持っていない可能性があります。
競合が値下げした場合でも顧客を維持できるのか、新しい企業が参入しても優位性を保てるのかなど、中長期的な競争力を検証することが重要です。
顧客構成・販売チャネル・主要取引先
対象企業の売上が、どのような顧客や販売経路によって支えられているかを確認します。
特に注意したいのが、少数の主要顧客に売上が集中しているケースです。
主要顧客との取引が終了した場合、事業全体に大きな影響が出る可能性があります。
主な調査項目は次のとおりです。
顧客別の売上構成
上位顧客への依存度
新規顧客と既存顧客の比率
顧客の継続率・解約率
契約期間と更新条件
顧客獲得に必要な費用
販売代理店やプラットフォームへの依存度
主要顧客との関係性
買収によって経営者や会社名が変わることで、顧客が離れる可能性もあります。現在の取引状況だけでなく、M&A後も関係を維持できるかを確認する必要があります。
商品・サービスとビジネスモデル
対象企業が、誰にどのような価値を提供し、どのように収益を得ているのかを分析します。
具体的には、次の点を確認します。
主力商品・サービス
商品別の売上と利益
顧客が対象企業を選ぶ理由
価格設定
原価構造
継続課金やリピート購入の有無
新商品・新サービスの開発力
模倣されにくさ
競争優位性の持続可能性
現在の主力商品が一時的な流行に支えられている場合や、特許・技術・ブランドなどの参入障壁が弱い場合には、将来の収益が低下する可能性があります。
組織・人員・業務プロセス
事業計画を実現するための組織や人員が整っているかも重要な調査項目です。
特に中小企業では、営業、商品開発、顧客対応などが、社長や一部の従業員に集中していることがあります。
買収後にキーパーソンが退職すると、顧客やノウハウが失われる可能性があります。
次のような点を確認します。
組織図と役割分担
主要人物の業務内容
キーパーソンへの依存度
従業員の採用・定着状況
営業や生産の業務フロー
業務の標準化・マニュアル化
外注先への依存度
生産設備やシステムの処理能力
成長計画に人員増加が必要であれば、必要な人材を実際に採用できるか、採用費や教育期間が計画に反映されているかも検証します。
売上・利益の構造と事業計画
対象企業から提示された事業計画について、売上や利益の前提を細かく分解して確認します。
売上であれば、顧客数、販売数量、単価、契約継続率などに分けて検証します。
費用であれば、仕入原価、人件費、販売促進費、設備投資、外注費などを確認します。
たとえば、売上の増加を見込んでいる一方で、営業人員や広告費が据え置かれている場合、計画の実現可能性に疑問が生じます。
過去の実績、市場予測、経営者へのヒアリングなどを組み合わせ、事業計画が合理的な前提に基づいているかを判断します。
シナジーとディスシナジー
M&Aによって期待できるシナジーも、ビジネスデューデリジェンスの重要な調査対象です。
代表的なシナジーには、次のようなものがあります。
買い手の顧客へ対象企業の商品を販売する
対象企業の販売網を活用する
仕入れを一本化して原価を下げる
重複する管理部門を統合する
技術や人材を共有する
ブランドや顧客データを活用する
一方で、M&Aによってマイナスの影響が生じるディスシナジーにも注意が必要です。
たとえば、買い手と売り手の顧客が競合関係にあり、買収後に一部の顧客が離れるケースがあります。企業文化や評価制度の違いから、従業員の退職が増える可能性もあります。
シナジーは、単に可能性を列挙するだけでなく、実現までの期間、必要な費用、実現確率まで含めて検討する必要があります。
ビジネスデューデリジェンスの進め方
ビジネスデューデリジェンスは、資料を広く収集すればよいわけではありません。
限られた期間で重要なリスクを確認するため、最初に論点を設定し、仮説を立てながら調査を進めます。
調査目的と重要な論点を整理する
最初に、今回のM&Aで何を確認する必要があるのかを整理します。
たとえば、対象企業を買収する目的が新規市場への参入であれば、市場の成長性や顧客基盤が重要な調査項目になります。
コスト削減を目的とする場合には、組織、仕入れ、設備、業務プロセスの重複を重点的に確認します。
すべての項目を同じ深さで調査すると、時間や費用が膨らみ、本当に重要なリスクを十分に検証できないことがあります。
買収目的や対象企業の特徴に応じて、優先順位を決めることが重要です。
関連記事:デューデリジェンスの費用相場はいくら?種類別の料金・内訳・見積もりの注意点を解説
必要な資料を収集・分析する
次に、対象企業へ必要な資料の提出を依頼します。
一般的には、次のような資料を確認します。
事業計画
商品・サービス別の売上資料
顧客別・地域別の売上資料
主要顧客との契約書
価格表
組織図
人員構成表
営業資料
市場調査資料
設備一覧
仕入先・外注先一覧
社内の管理指標
資料を確認する際は、合計値だけでなく、商品別、顧客別、拠点別などに分解して分析します。
売上全体は増えていても、主力商品の販売が減少し、一時的な大型案件によって補われているだけということもあるためです。
経営者や現場担当者へヒアリングする
資料から読み取れない情報は、経営者や現場担当者へのヒアリングで確認します。
経営者には、事業計画の根拠、競争力、業界の見通し、主要顧客との関係などを確認します。
現場担当者には、実際の営業方法、顧客からの評価、業務上の問題、設備や人員の不足などを聞きます。
経営者が認識している状況と現場の実態が異なるケースもあります。
複数の関係者から話を聞き、資料の内容と整合するかを確認することが重要です。
外部情報を使って仮説を検証する
対象企業から提供された資料や説明だけでなく、官公庁の統計、市場レポート、競合企業の公表資料などの外部情報も活用します。
社内資料の数値が市場環境と整合しているか、経営者の説明を客観的な情報で裏付けられるかを確認し、事業計画の前提を検証します。
事業計画を修正し調査結果を報告する
調査結果をもとに、売り手から提示された事業計画を必要に応じて修正します。
市場成長率、販売数量、価格、原価、人件費、設備投資などの前提を見直し、現実的な売上・利益計画を作成します。
そのうえで、次のような内容を報告書にまとめます。
対象企業の事業構造
市場と競争環境
競争力と成長余地
事業計画の妥当性
主要な事業リスク
シナジーとディスシナジー
買収後に優先すべき施策
報告書には事実を並べるだけでなく、それぞれの調査結果が買収判断や企業価値にどのような影響を与えるかを示す必要があります。
ビジネスデューデリジェンスで使われる分析方法
ビジネスデューデリジェンスでは、市場や競争力を整理するために、さまざまな分析方法が使われます。
ただし、フレームワークを埋めること自体が目的ではありません。
対象企業の将来収益に影響する要因を明らかにし、事業計画の妥当性を検証するために活用します。
PEST分析で市場を取り巻く環境を確認する
PEST分析は、対象企業を取り巻く外部環境を、次の4つの観点から整理する方法です。
Politics:政治・法律・規制
Economy:景気・金利・物価などの経済環境
Society:人口・生活様式・価値観などの社会環境
Technology:技術革新・デジタル化などの技術環境
法改正によって需要が増減する業界や、技術革新によって既存商品が代替される可能性のある業界を分析する際に有効です。
5フォース分析で業界の競争環境を確認する
5フォース分析は、業界の収益性や競争の激しさを、次の5つの要因から分析する方法です。
既存企業同士の競争
新規参入の脅威
代替品の脅威
売り手である仕入先の交渉力
買い手である顧客の交渉力
市場が成長していても、新規参入が容易で価格競争が激しい場合には、対象企業が高い利益率を維持できない可能性があります。
3C分析で市場・競合・対象企業を比較する
3C分析は、次の3つの観点から事業を整理する方法です。
Customer:市場・顧客
Competitor:競合
Company:対象企業
顧客が求めている価値、競合企業の強み、対象企業の特徴を比較し、対象企業の競争力を確認します。
対象企業が強みだと考えている要素が、実際には顧客から重視されていないこともあるため、顧客視点を含めて分析することが重要です。
SWOT分析とVRIO分析で競争力を検証する
SWOT分析は、対象企業の強み、弱み、機会、脅威を整理する方法です。
内部環境と外部環境を組み合わせ、どのような成長戦略が考えられるかを検討する際に使われます。
VRIO分析は、対象企業が持つ経営資源を次の観点から評価する方法です。
経済的な価値があるか
希少性があるか
他社が模倣しにくいか
組織として活用できているか
技術、人材、ブランド、顧客基盤などが、一時的な強みなのか、長期的な競争優位性につながるのかを確認できます。
バリューチェーン分析で価値とコストの発生源を確認する
バリューチェーン分析は、商品やサービスが顧客へ届くまでの活動を分解し、どの工程で価値やコストが生まれているかを確認する方法です。
仕入れ、製造、物流、販売、顧客対応などの工程を分析することで、対象企業の強みや改善余地を把握できます。
買収後にコストを削減できる工程や、買い手の経営資源を活用して強化できる工程を検討する際にも有効です。
ビジネスデューデリジェンスの結果をM&A判断にどう反映するか
ビジネスデューデリジェンスは、対象企業の市場環境や競争力を調査し、報告書を作成すること自体が目的ではありません。
調査によって把握した事業計画の実現可能性、競争優位性、顧客基盤、成長余地、シナジーなどを、M&Aの実行判断や企業価値評価、買収後の事業計画に反映する必要があります。
売上・利益計画の前提を見直す
対象企業の事業計画には、市場成長率、顧客数、販売数量、単価、解約率など、さまざまな前提が含まれています。
ビジネスデューデリジェンスでは、これらの前提が市場環境や過去の実績と整合しているかを確認します。
例えば、次のような点を検証します。
市場が事業計画どおりに成長するか
競合企業の参入によってシェアが低下しないか
販売数量や顧客数の増加に根拠があるか
値上げによって顧客が離脱しないか
新商品や新規事業の売上計画が現実的か
主要顧客との取引が継続するか
必要な人員や設備を確保できるか
事業計画が楽観的であると判断された場合には、売上や利益の予測を修正します。
単に計画数値を引き下げるのではなく、どの前提に問題があり、どの程度修正する必要があるかを明確にすることが重要です。
複数の事業シナリオを作成する
将来の市場環境や競争状況を正確に予測することは困難です。
そのため、ビジネスデューデリジェンスでは、一つの事業計画だけを前提にするのではなく、複数のシナリオを作成することがあります。
例えば、次のようなシナリオです。
事業計画どおりに成長するベースケース
市場成長や顧客獲得が想定を上回るアップサイドケース
主要顧客の離脱や競争激化が起こるダウンサイドケース
特に重要なのは、ダウンサイドケースでも投資として成立するかを確認することです。
売上が計画を下回った場合にどの程度利益が減少するのか、追加資金が必要になるのか、投資回収期間がどの程度延びるのかを検討します。
複数のシナリオを比較することで、対象企業の価値だけでなく、M&Aによって買い手が負うリスクも把握しやすくなります。
修正後の事業計画を企業価値評価に反映する
対象企業の企業価値は、将来の売上や利益、キャッシュフローの見通しに大きく左右されます。
ビジネスデューデリジェンスで事業計画の前提を修正した場合には、その結果を企業価値評価にも反映します。
例えば、次のような問題が見つかれば、企業価値が当初の想定を下回る可能性があります。
市場の成長率が想定より低い
競争優位性が長期間続かない
主要顧客への依存度が高い
顧客獲得コストが上昇している
新規事業の実現可能性が低い
売上拡大に多額の追加投資が必要になる
反対に、対象企業が安定した顧客基盤や独自技術、強いブランド、参入障壁などを持っていることが確認できれば、事業計画の確度が高まる場合もあります。
修正後の事業計画をもとに企業価値を再計算し、買収価格や投資条件を検討します。
シナジーの実現可能性と追加投資を評価する
M&Aでは、対象企業単独の価値だけでなく、買い手とのシナジーを見込んで買収価格を決めることがあります。
しかし、想定されているシナジーが必ず実現するとは限りません。
例えば、販売チャネルの共有によって売上が増えると見込んでいても、顧客層や営業方法が異なれば、想定どおりに成果が出ない可能性があります。
コスト削減についても、拠点やシステム、人員を統合するために、先行費用や一定の期間が必要になることがあります。
そのため、次のような点を確認します。
シナジーの根拠が具体的か
誰がどの施策を実行するのか
実現までにどの程度の期間が必要か
システム統合や人員再配置にいくらかかるか
顧客や従業員の離脱リスクがないか
対象企業単独の価値とシナジー価値が区別されているか
シナジーの実現可能性が低い場合や、多額の統合費用が必要な場合には、その影響を買収価格や事業計画に反映します。
事業継続に必要な条件をM&A契約に反映する
ビジネスデューデリジェンスで、特定の顧客、取引先、人材などへの依存が判明した場合には、事業継続に必要な条件をM&A契約に反映することがあります。
例えば、主要顧客との取引継続が事業計画の前提となっている場合には、契約の更新や取引継続の確認をクロージングの条件とする方法があります。
特定の経営者やキーパーソンに営業、技術、顧客関係が集中している場合には、一定期間の継続勤務や引き継ぎへの協力を求めることも考えられます。
また、特定の販売代理店、仕入先、業務提携先との関係が事業に不可欠な場合には、M&A後も関係を維持できるか確認する必要があります。
具体的な契約条件については、法務デューデリジェンスの結果も踏まえ、弁護士などの専門家と検討します。
M&Aを実行するかどうかを判断する
ビジネスデューデリジェンスで課題が見つかったとしても、直ちにM&Aを中止する必要はありません。
買い手の営業網、技術、人材、資金などを使って問題を改善できるのであれば、買収を進める判断も考えられます。
重要なのは、問題の有無だけでなく、次の点を確認することです。
買収後に問題を解決できるか
解決までにどの程度の期間が必要か
追加投資や人員配置が必要か
買い手に問題を解決する能力があるか
解決後も期待する投資収益を得られるか
一方、市場の大幅な縮小、競争優位性の喪失、主要顧客の離脱などによって、事業計画の実現可能性が大きく低下している場合には、M&Aを中止する判断も必要です。
買い手が想定するシナジーを考慮しても投資回収が難しい場合や、買収後に事業を立て直す負担が大きすぎる場合も、撤退を検討します。
調査結果を買収後の事業計画とPMIに反映する
ビジネスデューデリジェンスで把握した課題や成長余地は、買収後の事業計画やPMIにも活用されます。
例えば、主要顧客の離脱リスクが高いと分かった場合には、買収直後から顧客への説明や関係維持を優先します。
特定のキーパーソンへの依存度が高い場合には、権限や顧客情報、ノウハウの移管を進めるとともに、報酬や役割の見直しなどの定着施策を実施します。
また、次のような施策をPMI計画に盛り込みます。
主要顧客との関係維持
営業体制や販売チャネルの統合
商品やサービスの相互販売
不採算事業や商品の見直し
価格戦略の変更
キーパーソンの定着と後継者育成
システムや業務プロセスの統合
シナジー施策の進捗管理
ビジネスデューデリジェンスの段階から、買収後に誰が何を実行するかまで検討しておけば、M&A成立後の混乱を抑え、想定した効果を実現しやすくなります。
ビジネスデューデリジェンスを行う際の注意点
ビジネスデューデリジェンスでは、将来の市場環境や売上、利益を予測するため、分析結果には一定の不確実性が伴います。
売り手の計画や買収によるシナジーを前提どおりに受け入れるのではなく、計画を支える条件や、想定が外れた場合の影響まで確認することが重要です。
売り手から提示された事業計画を鵜呑みにしない
売り手の事業計画には、M&Aを有利に進めるための楽観的な前提が含まれている可能性があります。
売上成長率や利益率の数字だけでなく、顧客数、販売数量、単価、解約率、人員、設備投資などに分解し、それぞれの前提に根拠があるかを確認します。
過去の計画と実績に大きな差がある場合には、今回の計画だけが達成できるとする理由についても検証が必要です。
シナジーを過大評価しない
シナジーは、対象企業を買収しただけで自動的に発生するものではありません。
買い手の商品を対象企業の顧客へ販売する場合でも、顧客ニーズが一致しているか、販売を担う人員がいるか、既存の商品と競合しないかなどを確認する必要があります。
シナジーの金額だけでなく、実現に必要な人員、追加投資、期間、実現可能性を整理し、顧客離脱や従業員退職などのディスシナジーも考慮します。
複数のシナリオで将来収益を検証する
将来の市場環境や顧客動向を正確に予測することはできません。
そのため、売り手が提示した計画だけを検証するのではなく、標準的なケース、想定を上回るケース、想定を下回るケースなど、複数のシナリオを作成することが有効です。
市場成長率の低下、主要顧客の離脱、原材料費や人件費の上昇などが起きた場合に、売上や利益、必要資金がどの程度変化するかを確認します。
下振れした場合でも投資額を回収できるかを検証することで、過度に楽観的な買収判断を防ぎやすくなります。
資料だけでは確認できない事業リスクもある
ビジネスデューデリジェンスでは、売上、市場規模、顧客構成などの定量情報だけでなく、顧客との関係、経営者への依存度、業界内での評判といった定性情報も確認する必要があります。
対象企業から提出された資料や経営者へのヒアリングだけでは、外部から見た評価や現場の実態まで把握できないことがあるためです。
関連記事:M&Aで必要な調査とは?デューデリジェンスだけでは見えない企業リスクの調べ方
顧客や取引先から見た対象企業の評価
顧客別の売上や契約継続率は社内資料で確認できますが、顧客が対象企業との取引を続けている本当の理由までは分からないことがあります。
商品やサービスへの評価が高いのか、価格や担当者との個人的な関係によって取引が維持されているのかによって、M&A後の離脱リスクは異なります。
必要に応じて外部から情報を収集し、対象企業の説明と顧客・取引先から見た評価に食い違いがないかを確認します。
経営者やキーパーソンへの依存リスク
組織図や職務分掌を確認しても、実際の顧客関係や意思決定、重要なノウハウが誰に集中しているかまでは分からないことがあります。
経営者や主要人物が退職した場合の影響を判断するには、関係者へのヒアリングや業務実態の確認を通じて、形式上の役割と実際の役割にずれがないかを調べることが重要です。
業界内での評判や事業実態
対象企業のブランド力や信用力は、業界内での評判にも左右されます。
過去の取引トラブル、経営者の評判、従業員の離職状況などが、今後の顧客獲得や採用に影響する可能性があります。
ただし、評判に関する情報には誤りや主観も含まれます。複数の情報源を確認し、事実と評価を分けて整理する必要があります。
外部調査を検討すべきケース
次のような場合には、公開情報の確認や関係者への外部ヒアリングなどを検討する余地があります。
経営者への依存度が高い
主要顧客との関係が企業価値を大きく左右する
業界内での評判が事業継続に影響する
対象企業の説明と外部情報に食い違いがある
海外や複数地域に事業拠点がある
事業実態や取引関係を資料だけで確認できない
外部調査を行う場合には、調査目的を明確にし、適法な方法で情報を収集する必要があります。
まとめ
ビジネスデューデリジェンスは、M&Aの対象企業について、市場、競合、顧客、商品、組織、業務体制などを分析し、将来の収益力や事業計画の妥当性を検証する調査です。
財務デューデリジェンスが過去の業績や財務実態を中心に確認するのに対し、ビジネスデューデリジェンスでは、今後も売上や利益を維持・成長させられるかを確認します。
調査結果は、M&Aを実行するかどうかの判断だけでなく、企業価値評価、買収価格、契約条件、買収後の事業計画やPMIにも反映されます。
ただし、対象企業から提出された資料だけでは、顧客からの実際の評価、経営者やキーパーソンへの依存度、業界内での評判などを把握できない場合があります。
エスプレッソ情報調査室では、企業や経営者、取引先などに関する公開情報の確認や外部調査を通じて、資料だけでは見えにくい事業リスクの把握を支援しています。M&Aを進めるうえで確認したい事項がある場合は、ご相談ください。
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